令和2年度 受賞者
土居 直史 氏 (小樽商科大学商学部経済学科准教授)
論題:“Market structure and product quality: A study of the 2002 Japanese airline merger”(International Journal of Industrial Organization:62, 2019)
<受賞者略歴>(「公正取引」掲載時点)
- 2006年 横浜国立大学経済学部卒業
- 2008年 東京大学大学院経済学研究科修士課程修了
- 2012年 東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学(2016 年に博士(経済学)取得)
- 2012年 札幌学院大学経済学部特別任用講師
- 2014年 札幌学院大学経済学部講師
- 2018年 札幌学院大学経済学部准教授
- 2019年 小樽商科大学商学部准教授
- 現在に至る
<選考経過>
土居氏の受賞論文“Market Structure and Product Quality: A Study of the 2002 Japanese Airline Mergers”は、日本航空と日本エアシス
テムの経営統合の事後評価を行っている。運賃とフライト数を内生化した供給モデルを用いて、経営統合の効率性向上効果を指摘し、懸念された共謀は合併後に見られていないことを統計的に示した。
土居論文では、市場構造によって経営統合の効果が異なる点を指摘した。特に合併当事者2社による複占路線では、独占化することで効率性向上を上回る競争減殺効果が見られ、合併がない場合と比較して、運賃が有意に上昇した。こうした路線は小規模路線であり、採算性の低さから羽田空港発着枠の回収再配分においても新規参入は起きなかった。また3年間の10%価格引き下げという問題解消措置は、イラク戦争や新型肺炎(SARS)の影響により1年を待たずに打ち切られたために、独占化する複占路線を利用していた地域の利用者は、合併によって損失を被ったことも示唆された。
共著者の一人が審査委員であるものの、人口減少における競争政策のあり方について視座を与える点で重要な貢献があるとの意見が、他の二名の委員から出され、受賞に至った。