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独禁法よもやま話 第4回です。

「最高再販価格と独占禁止法」

キョウ子さん

 新型コロナウイルス感染症への対応として、マスクなどの価格をメーカーが指示できるようになったと発表されました。メーカーによる販売価格の指示は独占禁止法に違反するのではないでしょうか?

どっきん先生

 独占禁止法は、商品を小売店などに販売したメーカーや卸売業者が、その小売店などが消費者などに販売するときの価格を拘束・維持する行為を、「再販売価格維持行為」として、原則、禁止しています。これまでにも、ベビー用品、アウトドア用品、スポーツ用品など様々な商品について、公正取引委員会が排除措置命令を行っています。
 ただし、再販売価格維持行為が独占禁止法違反となるのは、その行為に「正当な理由がない」場合です。
 公正取引委員会は、令和2年4月、「マスク、除菌剤等の小売価格が高騰しないよう、これらの商品について、メーカー等が小売業者に対して一定の価格以下で販売するよう指示する行為は、独占禁止法上問題にならない」ことを明らかにしました。その理由として、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大が進む中でマスクのような商品について、小売業者が不当な高価格を設定しないよう期間を限定して、メーカー等が小売業者に対して一定の価格以下で販売するよう指示する行為は、通常、当該商品の購入に関して消費者の利益となり、正当な理由があると認められる」と説明しています。
 今回の場合には、マスクなどの需給がひっ迫し、暴利ともいえるような高値販売が横行している状況を前提としており、そのような場合には、事態が鎮静化するまでの間、メーカーが最高販売価格を指定して、その価格以上で販売しないように小売店を規律する(法外な価格で販売した小売店は、以後メーカーから取引を断られるかもしれない)ことが、むしろ消費者の利益にかなうと判断されたものでしょう。
 ですから、公正取引委員会が「一定の価格以下で販売するよう指示することにより、かえって商品の小売価格の上昇を招くような場合には、正当な理由があるとは認められません」と述べているように、販売状況の異なる他の商品にこの考え方を安易に拡大するのは、リスクがあると思われます。
キョウ子さん
 例えば、観光地で売れ筋商品を不当に高く売っている場合に対応するなど、メーカーとして信用維持のため、一定以上の価格で売ってはいけないと小売価格の上限(最高販売価格)を決めて守ってもらうことは独禁法上問題ないでしょうか?

どっきん先生

 公正取引委員会は、再販売価格維持行為については、流通業者間の価格競争を減少・消滅させるもので、最低販売価格を決める場合だけではなく、最高販売価格を決めることも独占禁止法上問題となり得るとしています。他方、流通業者が自主的に価格を決定できることを前提に、メーカーなどが「希望小売価格」、「参考価格」などを提示することは、問題とはなりません。
 再販売価格維持行為は、「正当な理由」がある場合には違法になりませんが、「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(流通・取引慣行ガイドライン。平成29年最終改正)では、「正当な理由」について、「事業者による自社商品の再販売価格の拘束によって実際に競争促進効果が生じてブランド間競争が促進され、それによって当該商品の需要が増大し、消費者の利益の増進が図られ、当該競争促進効果が、再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法によっては生じ得ないものである場合において、必要な範囲及び必要な期間に限り、認められる」と記載されており、正当な理由が認められる場合を限定的に考えているようです。また、平成29年にガイドラインを改正した際の公募意見に対する考え方においても、最高販売価格の制限であるというだけで当然に「正当な理由」と認められるわけではないことを明記しています。
 こうした点から考えると、自社のブランドへの信頼を維持することは企業としては重要なことですが、それだけでは再販売価格維持行為を合法とするための「正当な理由」とは認められにくく、価格を指示することで消費者の利益の増進などの効果が見込まれるかどうか、時間や場所を限定的に実施することに意味があるかどうかなどを慎重に検討する一方で、価格拘束以外の方法(委託販売など販売店との契約形態の見直し、など)がないかを検討する方が現実的だと思われます。
【参考】
  • 独占禁止法に関する相談事例集(平成17年度)(事例16 事業者団体による再販売価格に関する上限価格の設定)
  • 独占禁止法に関する相談事例集(平成28年度)(事例1 メーカーによる小売業者への販売価格の指示)

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