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独禁法よもやま話 第14回です。

第14回 「フリーランスと独占禁止法・下請法」

キョウ子さん

 公正取引委員会などが事業者とフリーランスとの取引についての考え方(ガイドライン)を公表したようですね。

どっきん先生

(ガイドライン作成の経緯)
 フリーランスについては、多様な働き方の拡大、ギグ・エコノミー(インターネットを通じて短期・単発の仕事を請け負い、個人で働く就業形態)の拡大による高齢者雇用の拡大、社会保障の支え手・働き手の増加などに貢献することが期待されています。そこで、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、内閣官房が令和2年2月から3月にかけて実施した実態調査結果を踏まえ、政府として一体的に、フリーランスの保護ルールの整備を行うこととされていました。
 これらを踏まえ、事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法、下請法、労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに、これら法令に基づく問題行為を明確化するために、今回、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が連名でガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)を策定することとしたのです(令和3年3月26日公表)。
キョウ子さん
 フリーランスは、労働者のような性格をもっているように思いますが、独占禁止法や下請法が適用されるのですか。

どっきん先生

(独占禁止法、下請法及び労働関係法令の適用範囲)
 「フリーランス」とは法令上の用語ではなく、定義は様々ですが、今回のガイドラインでは、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指す」としています。
 ガイドラインでは、独占禁止法の規定は取引の相手方が事業者であれば個人の場合でも適用され、また、下請法の規定は取引の発注者が資本金 1、000万円超の法人の事業者であれば相手方が個人の場合でも適用されますから、事業者とフリーランスとの取引には独占禁止法や下請法を広く適用することが可能であることを明らかにしています。
 ただ、フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用されます。この場合において、独占禁止法や下請法上問題となり得る事業者の行為が、労働関係法令で禁止又は義務とされ、あるいは適法なものとして認められている 行為類型に該当する場合には、それらの労働関係法令が適用され、独占禁止法や下請法上問題としないとされています。形式的には雇用契約を締結せず、フリーランスとして請負契約や準委任契約などの契約で仕事をする場合であっても、労働関係法令の適用に当たっては、契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて、「労働者」かどうかが判断されることになります。「労働者」に該当すると判断された場合には、労働基準法や労働組合法等の労働関係法令に基づくルールが適用されることとなります。
キョウ子さん
 それでは、フリーランスとの取引について、独占禁止法や下請法上問題とされるのは、どのような行為でしょうか。

どっきん先生

(独占禁止法又は下請法上問題となる行為)
 独占禁止法の優越的地位の濫用として、あるいは下請法違反として、発注事業者の行為で問題とされるものとして、ガイドラインでは以下の行為を挙げています。
  1. 報酬の支払遅延
  2. 報酬の減額
  3. 著しく低い報酬の一方的な決定
  4. やり直しの要請
  5. 一方的な発注取消し
  6. 役務の成果物に係る権利の一方的な取扱い
  7. 役務の成果物の受領拒否
  8. 役務の成果物の返品
  9. 不要な商品又は役務の購入・利用強制
  10. 不当な経済上の利益の提供要請
  11. 合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務・競業避止義務・専属義務の一方的な設定
  12. その他取引条件の一方的な設定・変更・実施
 なお、下請法と独占禁止法のいずれも適用可能な行為については、通常、下請法を適用するとしています。

 また、フリーランスは、役務等を提供する機会、つまり仕事を獲得・拡大するため、仲介事業者を介して発注事業者や消費者と取引を行う場合があります。
 仲介事業者について、ガイドラインでは、仲介事業者が、自己が提供する仲介サービスの規約を一方的に変更することにより、①フリーランスから仲介事業者に支払われる手数料が引き上げられる場合、②フリーランスに対し、新しいサービスの利用を義務化してその利用手数料を設定する場合、③発注事業者からフリーランスに支払われる報酬が減る場合などが考えられるとして、このような規約の変更を一方的に行うことにより、自己の取引上の地位がフリーランスに優越している仲介事業者が、フリーランスに対して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなるときは、優越的地位の濫用として問題となるとしています。
キョウ子さん
 今後はフリーランスに対する事業者の問題となる行為が摘発されていくわけですね。

どっきん先生

(発注事業者において未然防止の上で期待されること)
 もちろん、独占禁止法や下請法上問題となる行為があれば公正取引委員会は対処していくことになるのでしょうが、今回のガイドラインでは、優越的地位の濫用行為の未然防止のために、発注事業者において、フリーランスが発注時の取引条件を書面で確認できるようにするなどの対応をとることの必要性を指摘し、契約書のひな型を示すなどもしており、ガイドラインのタイトルにもあるとおり、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのもので、企業が適切な対応をとることを期待しているものと言えるかもしれません。
 なお、下請法の規制対象となる場合で、発注事業者が発注書面をフリーランスに交付しない場合は、下請法第3条で定める書面の交付義務違反となります。
キョウ子さん
 今回のガイドラインが浸透して、フリーランスの方が安心して働ける環境が整備されるとよいですね。

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