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独禁法よもやま話(第22回)

第22回「課徴金の算定」

キョウ子さん
 最近、あるカルテルに対する課徴金額が過去最高になる見込みとの報道が出ています。それによると、事業者によって課徴金額が大きく異なるように見えるのですが、そもそも課徴金額はどのように決まるのですか。
どっきん先生
 カルテルや入札談合など一定の独占禁止法違反行為については、違反を行った事業者に対して行政上の措置として課徴金が課せられるのですが、課徴金の算定方法はいたってシンプルです。すなわち、課徴金額は、違反行為の対象となった商品・役務の違反行為期間中の売上額に一定率(10%)を乗じたものとなります。この一定率の10%について、違反行為者が中小企業の場合には4%となります。
キョウ子さん
 なるほど。そうすると、各事業者の違反対象となった商品・役務の売上規模に応じた額が課徴金額となりそうですね。そうであれば、業界事情に詳しい当該事業者は、各社の課徴金額がだいたいどの程度になるか、あるいは自社と他社の課徴金額はこれくらい差が出そうだとか、ある程度予想できそうな気もするのですが。
どっきん先生
 そうですね。ただし、課徴金減免制度により課徴金額が変わってきます。この制度は、事業者が独占禁止法違反行為があることを公正取引委員会に自主的に報告(減免申請)した場合には、課徴金が免除されたり、減額されたりします。具体的には、公正取引委員会が調査を始める前に、最初に減免申請をすると課徴金が免除になる、つまり、課徴金額はゼロとなるのです。さらに、2番目以降に減免申請した場合にも課徴金が減額となります。
 独占禁止法が令和元年に改正され(一部を除き令和2年12月施行)、課徴金減免制度に調査協力減算制度が導入されてからは、減免申請の順番と調査協力の度合いに応じて減額の幅、つまり減算率が決まることになります。
キョウ子さん
 課徴金減免申請が出されると、カルテル対象商品の売上額だけでは課徴金額が決まらないということになりますね。
どっきん先生
 そうですね。ちなみに、令和元年の独占禁止法改正により課徴金の算定に影響を与えることとなったものとして、業種別算定率の廃止があります。先ほど課徴金の算定に当たり、一定率が10%と言いましたが、改正前においては、卸売業の場合は2%、小売業は3%、その他が10%とされていました。
 ここでいう卸売業とは、当該事業者全体として卸売業を営んでいるかどうかということではなく、違反行為の対象となった事業活動について卸売業に該当するかどうかということになります。近年、メーカーであっても、実際の製造はグループ会社に委託し、そこから仕入れて販売するケースも増えてきていますが、カルテル対象商品についてこのような委託をすると一般的には卸売業に該当することになり、一定率は2%になります。実際に過去の違反事件においても、業種別算定率の適用の違いにより事業者間で課徴金額が大きく異なるような事例もありました。自社で内製している場合には10%で、グループ会社に製造を委託すると2%になるというのはどうかといった議論も出てきて、この業種別算定率が廃止となったものです。
キョウ子さん
 確かに、特に違反対象商品の売上額が大きくなると、10%か2%かで課徴金額が大きく異なることになりますね。例えば、カルテル対象商品の売上額が1000億円であるとすると、製造業と認定されれば、課徴金額は100億円ですが、卸売業と認定されれば20億円になるということですからね。このような業種別算定率が廃止されたということですね。
どっきん先生
 そうです。令和元年の独占禁止法改正によりもう一つ見逃せないのは、中小企業の算定率に関する改正です。先ほど課徴金の算定について、中小企業の場合には算定率が4%になると説明しました。しかし、違反を行った中小企業の親会社、兄弟会社が大企業である場合には、この4%の適用は受けられなくなりました。中小企業かどうかは企業グループ全体で見ようということになったわけです。
 さらに、法改正により、それまで課徴金の算定期間は、違反行為が長期に及んでいたとしても最長3年とされていたのですが、改正後は最長10年となりました。
キョウ子さん
 独占禁止法の改正により、課徴金制度も違反事業者に大きな影響を与えるような変更があったということで、事業者としても制度改正の内容をよく理解しておかないといけないですね。
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