第6回「独占禁止法の適用除外」
地域特例法以外にも、独占禁止法の適用除外がありますが、どのようなものでしょうか?
独占禁止法は、原則としてあらゆる産業における競争制限行為に適用されますが、独占禁止法以外の政策目的を実現する観点から、行為類型や産業分野を明示して、例外的に独占禁止法を適用しない場合が法律で定められています。具体的にみると、独占禁止法そのものにも、小規模事業者の集まりである組合の行為(農業協同組合、中小企業協同組合など)、特許権等知的財産権の行使、再販売価格維持行為に対して、独占禁止法を適用しないことが明示されています。また、航空・海運などの運輸関係、金融関係など個別の法律で適用除外を定めているものもあります。 独占禁止法の適用除外制度は、かつては様々な産業分野で認められており、その大部分は事業者又は事業者団体によるカルテル行為を適用除外とするものでした(適用除外カルテルの件数でみると多い時には1000件以上が認められていました)。1990年代以降、見直し・縮小が進み、現在は、独占禁止法自体に規定されているものを含め17の法律に基づく24の制度が存在しています(平成30年度末現在。認可等が行われた適用除外カルテルの件数は55件)。
なお、独占禁止法の適用除外とは言っても、その範囲を逸脱した場合(例えば、認可等の手続を行っていないもの、協同組合の本来の行為とは認められないもの)、不公正な取引方法を行った場合などには、原則に戻って独占禁止法違反になり、その実例も多数ありますので、注意が必要です。
また、適用除外が認められる対象や範囲は国によって異なりますから、国際的に取引を行っている事業者は、日本では独占禁止法の適用除外になっている行為であっても、取引の相手国では競争法が適用され、違法とされる可能性があることにも注意する必要があります。
どのような理由で独占禁止法の適用除外制度が認められているのですか?
独占禁止法の適用除外制度を認める理由として、かつては、産業の育成・強化、産業合理化の推進、国際競争力強化、不況時の過剰生産への対応、過剰な重複投資の抑制などの理由が挙げられていました。それらの理由の多くは現在では合理的ではないと考えられ、現行の適用除外制度の根拠としては、例えば、次のようものが考えられます。
- 中小企業など経済力が劣るものが大企業などと対等な交渉を行えるよう、共同購入、共同販売などの共同事業を認めるもの……農業協同組合、中小企業協同組合など
- 利用者の利便性向上等のため国際的に共同行為が許容されているもの……航空、海上運送の国際協定など
- 需要の著しい減少等の理由により、複数の事業者を存続させることが困難な事情があるもの……生活路線の共同運航、特定の地域でのタクシーの共同減車など
- 危険負担を分散する必要が高いなどの事業の特殊性が認められるもの……高リスクに対する共同保険・再保険など
- 文化の維持など必要性から伝統的に許容されているもの……著作物の再販売価格維持契約
このように、適用除外制度を導入・維持する一定の合理性がある場合であっても、実際に導入・維持するかどうかは、その目的・理由として掲げられていることが、より競争制限的でない別の方法で達成することはできないのか、消費者・利用者に及ぼす不利益が大き過ぎないかなど、慎重な検討が必要と考えられます。